摂津響Saalさんにて、ピアノの山口美樹子先生と、ベルギーのチェリストのニコラ・デルタイユさんと共演しました。
【プログラム】
◉R. シュトラウス:ピアノトリオ第1番 イ長調
◉バッハ:15の2声インベンション BWV 772-786より
第1番ハ長調、第2番ハ短調、第5番変ホ長調、第6番ホ長調、第12番イ長調、第13番イ短調
(バイオリン&チェロ二重奏)
◉シューベルト:ピアノトリオ第1番 変ロ長調 作品99 D898
◉シューマン:『献呈』 ピアノトリオバージョン (アンコール)
山口先生から選曲を任され、来る日も唸りながら練りに練った選曲でしたが、摂津響ザール10周年のお祝いにふさわしく、華やかで明るく楽しいプログラムになりました。
まず最初に決まったのはシューベルト。ピアノトリオの名曲の一つということもあって昔からの憧れていたことは、決め手の一つでした。
また最近、シューベルト最晩年のピアノ作品を聴くのが好きなことも影響しました。
楽しい時も、心に波風が立つ時も、疲れている時も、あまり時を選ばずに穏やかに寄り添ってくれるような曲たちだと感じます。
気分がコロコロ変わって、転調を繰り返したり、しつこく何度も同じフレーズを繰り返して述べているようなところも、ちょっとふざけているような姿が浮かぶところも、なんだか人間らしくていいなと思っています。
...ということで、シューベルトの遺作とも言われている、50分近くあるこの大曲をどうしても弾きたい。摂津響Saalの、音楽を愛するお客様たちのお顔を思い浮かべながら、さて前後はどうしようかと考えました。
なかなか曲間のバランスも難しく、これという候補が初手で思い当たらず、片っ端からピアノトリオの曲を検索してあれこれ思索しました。
ついにピンときたものが、R. シュトラウスのピアノトリオ第1番でした。12-13歳ごろの、ごくごく初期の作品で、世界で出版しているのはSchott社のみ、日本に在庫なく輸入のみ、と楽譜入手にもひと苦労...とだけあって演奏機会的にも非常に稀な作品です。
楽曲は、モーツァルトらしさ、バロックらしさを随所に感じる耳に優しい曲で、穏やかで明るくハッピーな可愛らしい曲です。ですが、後のシュトラウスらしさに繋がるような、非常に面白い和音の変化の仕方(同音を頼りに全然違う調に移行するなど)もあって、すでにセンスを存分に発揮しています。
お客様にも、こんな素敵な曲があったのかという驚きの声をたくさん頂きました。
中間にはバッハのインベンションから6曲。クラヴィーア用の練習曲で、2旋律、右手と左手をバイオリンとチェロに分けて演奏しました。
15曲ある曲順は基本的にはCの音から長調・短調、半音ずつ上がるように置かれていて、長調と短調の性格の違いが面白いなと思いながら抜粋してみました。
アンコールにはシューマンの『献呈』。ロベルトが妻クララの結婚にあたって捧げた愛の曲として有名です。大事な方々を思いながら聴いていただけるよう演奏しました。
初めて共演したニコラさんはとてもチャーミングで穏やかで優しい方で、そのお人柄の通りの温かい音をお持ちのチェリストでした。
唐突にボソっととても面白い冗談を言うので、それまた面白く楽しく合わせをしていました。
聴く方も、弾く方もなかなか体力のいるプログラムでしたが、これにもついてきてくださるザールの温かいお客様方と、実現させて頂けた共演者のおふたかた、スタッフの方々に感謝です。