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~演奏会によせて~ 

Program

エイミー・ビーチ:ロマンス 作品23
R.シュトラウス:ヴァイオリンソナタ

-休憩-
ファリャ:スペイン舞曲 (クライスラー編曲)

チャイコフスキ:懐かしい土地の思い出 作品42

ウィニアフスキ:モスクワの思い出

バルトーク:ルーマニア民族舞曲

 

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この度、東京でリサイタルを開催することに致しました。

プログラムは「暖かくて懐かしい風景を想起させる曲、心を鼓舞する曲」をテーマに選曲しました。昨今、気の抜けない大変な情勢が続いておりますが、演奏会の間は聴いてくださる方が、日常の喧騒や慌ただしさから離れ、音楽に委ねて心を解放し、再び日々の活力が芽生えることができるような機会になるように願っています。

 

今まで私がヴァイオリンを弾き続けるにあたり、多くの方々の応援とご理解を頂いてきました。ヴァイオリンを通して出会ったお客様、音楽仲間も数知れません。早いもので私は医学部5年生となり、卒業をあと1年半後に控え、卒後の進路も具体的に考えるようになりました。研修医の2年間は研修に集中するつもりでおり、今回は今までのヴァイオリンの演奏活動の集大成として臨む気持ちでいます。

 

暖かく応援してくださった友人、先輩方、先生方、お客様に感謝の気持ちを込めながら、そして私の大好きな曲たちを一緒に共有できる喜びを噛み締めながら演奏するつもりでいます。伴奏には、幼い頃からお世話になってきた、河地恵理子先生にお願いしました。

この素敵なフライヤーは、今回の演奏会のテーマをイメージして、TKD DESIGN OFFICEの武田望さんが作って下さいました。

少し落ち着いてきたかと思われても、感染拡大状況は刻一刻と変化し、予断を許さない情勢が続いております。ガイドラインを遵守し、安全に開催するよう細心の注意を払いますが、お越し下さる際には、どうぞ無理のないようにお願い致します。また、マスクの着用・検温・手指の消毒・距離の確保にご協力をお願い致します。

 

 

 

曲目について、簡単な解説と個人的なエピソードを述べたいと思います。
 

1曲目の『ロマンス作品23』はロマン派に属する女流作曲家のエイミー・ビーチによる小品です。作品の演奏機会は少ないものの、近年再注目されつつある作曲家です。今年の自粛期間中にはYoutubeで沢山の曲を聞きましたが、ドヴォルザーク作曲の『ロマンス』という私が大好きな作品を聴いていた時に関連動画として見つけ、その甘美さ、優しい旋律、色が移り変わっていくようなハーモニーの美しさに魅了され、レパートリーとすることに決めました。(詳しい解説はこちら)

 

2曲目は、今回のリサイタルのメインであるR.シュトラウス作曲の『ヴァイオリンソナタ』です。ドイツの後期ロマン派を代表する作曲家で、シュトラウスが24歳(1887年)という若さで作曲した曲です。この後室内楽作品よりも交響詩やオペラの作曲へと転換していきますが、まさにその転換期の作品です。変ホ長調という、ベートーヴェンのの交響曲第3番以後、「英雄の調」と言われている調で書かれた作品で、華やかさ、凛々しさがあります。2楽章は特に”美しくない”箇所がないほどで、メロディも和音も、聴く人を虜にします。YoutubeでGinette Neveuの2楽章の美しさに大感激し、演奏したいと決めました。(詳しい解説はこちら)

 

後半のチャイコフスキとウィニアフスキは、”思い出”関連で選曲してみました。それぞれロシア、ポーランドの作曲家です。

 

チャイコフスキの『懐かしい土地の思い出 作品42』は、3曲から成り、特に第3曲目の『メロディ』はヴァイオリンのアンコールピースとしてもよく演奏される有名曲です。哀愁漂う第1曲目の『瞑想曲』、一転せわしなくリズムが刻まれ躍動感のある第2曲目の『スケルツォ』と合わせての小品集です。第1曲目の『瞑想曲』は実は有名なチャイコフスキーの協奏曲の第2楽章になる予定でしたが破棄されて改作され、このバージョンになりました。パトロンであった女性に感謝の印としてこの曲を送ったようです。小さい頃から、父の運転する車の中で、ヴァイオリンの曲が流れていて移動時間はずっと何かしらのヴァイオリンの曲を聴いていました。この曲たちもその中のトラックに入っており、昔から親しんできた曲です。(詳しい解説はこちら)

ウィニアフスキの『モスクワの思い出』は、彼が1851年から1853年にかけてロシアを演奏旅行して回った時の印象を基にして作曲されました。途中、単旋律で『赤いサラファン』のメロディが出てきますが、この曲は実はその民謡の変奏曲なのです。主題のテーマがどこに出てくるのか、楽しみながら聴いて頂けると思います。この曲は、私が10歳の時に発表会で演奏しました。実は発表会の前週などに、バレエの公演でロシアを舞台にした『アンナ・カレーニナ』に子役として出ていたことがあり、その衣装が当時のロシアの服装に近かったため、友人のお母様方から「来週の発表会もその衣装で出たらいいのに~笑」などと言われたことまで思い出します。(結局ドレスで弾きましたが)。

(詳しい解説はこちら)

ファリャとバルトークは”舞曲”の共通点で選びました。舞曲の持つエネルギーは、心に元気を与えますし、聴いていると自然と体を動かしたりリズムを取りたくなったりします。

ファリャはスペインの作曲家で、マドリードでピアノと作曲を学び、舞台音楽作品を数多く作りました。作曲を学んだ師の影響で、スペイン民族音楽、とりわけフラメンコに興味を持ち、多くの作品にその影響が見られます。今回演奏する"スペイン舞曲"は、ファリャが1905年に作曲した"はかなき人生"というオペラからの抜粋です。第2幕から、クライスラーかヴァイオリンとピアノ用に編曲しました。華やかで情熱的で、ときに哀愁も感じさせる曲です。この曲は昨年の大阪でのリサイタル以降、そのはっきりとしたリズムと、たまに出現するピチカート(右手で弦を弾く技法)のかっこよさから、大好きで演奏しています(詳しい解説はこちら)

バルトークは、民謡採集を行って独自のスタイルを打ち出したハンガリーの作曲家です。ルーマニアは当時のハンガリー王国の一部で、『ルーマニア民俗舞曲』は、少し土臭くも生命力に溢れた6つの民謡を主題にしています。バルトークは、今までコンチェルトやラプソディをじっくりと長い期間勉強したことがあり、その独特の語法、和声、リズム、美学に”ハマった”経験から、思い入れのある作曲家です。バルトークを弾いていると、自分も活き活きした気持ちになれます。(詳しい解説はこちら)

 

 

 

簡単な曲目解説と、付随する個人的エピソードは以上です。リンク先の詳しい曲目解説もぜひご覧ください。
​このような状況下ではありますが、皆様にお目にかかれますことを心待ちにしております。

2020.9.13

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