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  • Kanon Kobayashi/ 小林香音

バルトーク『ルーマニア民俗舞曲』

ルーマニア民俗舞曲 (バルトーク)

1. 棒踊り 2. 腰帯踊り 3. 足踏み踊り 4. 角笛の踊り 5. ルーマニア風ポルカ 6. 速い踊り バルトークは、民謡採集を行って独自のスタイルを打ち出したハンガリーの作曲家です。ルーマニアは当時のハンガリー王国の一部で、『ルーマニア民俗舞曲』は、少し土臭くも生命力に溢れた6つの民謡を主題にしています。


 

バルトークは第一次世界大戦を経験して鬱病となり、2年間作曲を中断したのちに再び作曲を始めました。『ルーマニア民俗舞曲』はこの時期に作曲した最初の作品の一つです。



バルトークはルーマニアの民俗音楽がハンガリーのものよりもはるかに多様性に富んでいることに気付き、ルーマニアのトランシルヴァニア地方を何度も訪れ、人々の音楽を録音し、書き写しました。リズム、音色、バイオリン、ギター、農民の笛、バグパイプなどの地元の楽器のさまざまな組み合わせは、20世紀の芸術音楽に導入すべき新しい刺激的な要素を探求する上で、非常に刺激的であることが彼の取り組みによって証明されました。 民俗音楽研究の第一人者であったバルトークは、ブタペストでの講演の中で、民俗音楽はまず都市の民俗音楽( "紳士階級の愛好家が作曲"したもの)と、農民音楽に分けられると指摘しています(1)。農民音楽とは "それぞれの民族の農民階級において普及しているもしくは普及していた旋律のうちでも、彼らの音楽的感性の本能的表現であるもの" を指すとしています。


さらに続けて、東欧の農民音楽についてはこう述べています。

農民音楽の中でも、東ヨーロッパではさらに一つの特別なグループが他とはっきり区別される。そのグループとは、狭い意味での農民音楽である。
…一様な性格と構造を備えた旋律の巨大な集合体が、狭い意味での農民音楽を成り立たせているのだ。…その価値は民俗調の芸術音楽とは比べようがないほどに高い。…実際のところ、この種類の音楽は、都市文化の影響を受けていない人々のもとで無意識のうちに働く、自然力による変形作用の所産にほかならない。(文献1,p.13-14)

バルトークは、民俗音楽が芸術音楽の基礎となりうるには3つの方法があると考えていました。

本物の民俗音楽の旋律に伴奏をつけ、必要に応じて導入部と終結部を加える方法 ② 民俗音楽を模倣して独自のメロディーを考案する方法 ③ 民俗音楽が目立ちすぎることがないように、作曲家自身がそのエッセンスを吸収して自分の作曲言語にする方法 これら3つの方法のうち、ルーマニアの民族舞踊は①の方法に基づいています。トランシルヴァニアで収集した民族旋律を編曲する際、バルトークはその音程とリズム構造を保ちつつ、伴奏に豊かな和声を導入しました。しかし、速い踊りの中にはさらに速く、遅い旋律の中にはさらに遅くしたものもあり、それぞれの個性が強調されています。




1. 棒踊り:2人のジプシーのヴァイオリニストの演奏を録音したものが元になっています。 2. 腰帯踊り:農民のフルート演奏が原曲です。 3. 足踏み踊り:農民の笛の演奏を元にしており、おどろおどろしい暗い雰囲気です。 4. 角笛の踊り:4分の3拍子で書かれています。3連符、半音の加工形が特徴的です。 5. ルーマニア風ポルカ:4分の2拍子と4分の3拍子で交互に踊るものです。 6. 速い踊り:躍動感があると同時に、コンスタントに2拍子で開放弦が刻まれ、地に足がついているような安定感があります。

References (1)バルトーク音楽論. ベーラバルトーク. 伊東信宏・太田峰夫(訳). ちくま学芸文庫. 2018.6.10 (2)Romanian Folk Dances,BB.68.Béla Bartók


(3)Building a classical music library: Bela Bartok,The Guardian. Stephen Moss. Tue 7 Aug 2007 08.05 BSTFirst published on Tue 7 Aug 2007 08.05 BST.2020.10.31



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