演奏会のお知らせです。大阪府医師会フィルハーモニーさんと、シベリウスのヴァイオリンコンチェルトを演奏させて頂きます。指揮は髙谷光信先生で、大阪府のザ・シンフォニーホールにて7月3日(日曜)14時開演です。
大阪府高槻市でのリサイタルをきっかけに、お声がけいただいてから丸3年。新型コロナウイルスの影響での本演奏会プログラムの1年延期を経て、ついにソリストとしてオーケストラと共演させて頂けることになりました。フィンランドの作曲家シベリウスの作品です。
ロシアの統制に抵抗して高まったフィンランドのナショナリズムを鼓舞するような民族的なものを超えて、普遍的な音楽を目指した時期の作品であるようです。
日本人の私でも、作品の透明な美しさ、心揺さぶられる躍動に共感できるのは、普遍性を追求したシベリウスの姿勢あってこそだと思います。
世界を意識したシベリウスの意気込みは、作曲家としての活動名を生名「ヤンネjanne」ではなく、外国船の船長で世界を股にかけて活躍したの叔父にあやかり軽やかなフランス風に「ジャンJean」としたことからも見てとれます。
シベリウスが生まれる60年ほど前にフィンランドは600年ほど続いたスウェーデンの支配下から、帝政ロシアに割譲されました。以後フィンランドは大公国として自治を許され、スウェーデンの影響を色濃く残しながら、フィンランド人のナショナリズムが台頭していきました。
まさにシベリウスの時代は、文化にフィンランドの民族的アイデンティティが求められていた時代でした。また、言語の主導権をめぐって、スウェーデンの文化の推進者と、フィンランド文化の地位向上を目指した人たちで社会が二分化されていました。シベリウスはスウェーデン語系フィンランド人であり、彼自身のアイデンティティが2つの文化の間にありました。
さらに、帝政ロシアによって宣言された二月宣言で、フィンランドの自治権は廃止されてしまい、さらにフィンランドに対する統制が強まり、逆にスウェーデン系/フィンランド系といった対立を超えて、フィンランド全体のナショナリズムが強まっていった時代でした。
このような情勢の中で、シベリウスはフィンランド人という民族意識に根差しながらも、民族的なものを超えた、普遍的で観念的な音楽を目指したというのは非常に強い意識がみてとれます。彼の抽象的美学の原点は、シベリウスが若き頃のフィンランド芸術界の動向シンボリズムにあるようです。
『(註:シンボリズムとは) 事物をありのままに描くのではなく、観念に形を与えて生ずる効果の方に重点を置いて、多様なイメージを喚起させる手法である。神秘的な森、仄暗い水辺、黄泉の国、静寂と白鳥、そしてデュオニソス的なもの…(中略)..幻想的な要素を通して世界の本質に迫ろうとしたシベリウスに対し、シンボリズムの姿勢は大きな手がかりを与えたといえる([1]p.68)』
粗野でも繊細でもあり、論理的かつ即興的でもあり、孤独でも社交的でもあり、民族的アイデンティティに揺れ、その他様々多面性を感じさせる作曲家の姿を感じながら、自然と、人間と、観念的な美しさを表現したい!と意気込んでいます。
この曲を、学生時代から長い時間をかけて準備してきて、現在も気合を入れて準備しているので、ぜひ楽しみにいらしてください!
お問い合わせ:ザ・シンフォニーホールチケットセンター(06-6453-2333)
大阪府医師会フィルハーモニー: http://osaka-ishikai-phil.jpn.org
参考文献 [1]作曲家人と作品シリーズ「シベリウス」/神部智/音楽之友社/2017年12月
[2] Jean Sibelius. The Music. Violin Concerto. http://www.sibelius.fi/english/musiikki/ork_viulukonsertto.htm. View:May 22nd, 2022
[3]ジャン・シベリウス 交響曲でたどる生涯/松原千振/アルテスパブリッシング/2013年7月
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